2026年8月6日木曜日

日銀利上げから1か月②|メガバンク3行はTOPIXをどれだけ上回ったのか

第1部では、日銀がなぜ利上げしたのか、短期金利と長期金利、イールドカーブの関係を整理しました。

今回は、その答え合わせです。

日銀利上げ後の約1か月で、三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGは、いずれもTOPIXを上回りました。

日本株全体が大きく上昇したのではありません。TOPIXがほぼ横ばいだった期間に、メガバンク3行は約6~10%上昇しました。

この記事のポイント
・メガバンク3行は、利上げ後の約1か月でTOPIXを明確に上回った
・3行の中では三菱UFJの上昇率が最も高かった
・保有継続と、上昇後の買い増しは分けて考える必要がある

メガバンク3行はTOPIXをどれだけ上回ったか

比較したのは、2026年6月17日の終値と、約1か月後となる7月14日の終値です。

日経平均は値がさ株や半導体株の影響が大きいため、今回は日本株全体との比較対象としてTOPIXを使いました。

銘柄・指数 6月17日終値 7月14日終値 上昇率 TOPIXとの差
三菱UFJ FG 3,272円 3,600円 約10.0% 約+9.4ポイント
三井住友FG 6,450円 6,967円 約8.0% 約+7.4ポイント
みずほFG 8,006円 8,480円 約5.9% 約+5.3ポイント
TOPIX 4,013.23 4,038.98 約0.6%

TOPIXが約0.6%の上昇にとどまった一方、メガバンク3行は約6~10%上昇しました。

同じ日本株市場の中でも、銀行株が相対的に強かったことが分かります。

TOPIXにはメガバンク3行自身も含まれているため、完全に独立した比較ではありません。それでも、3行がTOPIXを大きく上回ったという結果は変わりません。

※2026年6月17日の終値を100として、メガバンク3行とTOPIXの日次推移を指数化しています。

6月17日を100として指数化すると、7月14日時点では三菱UFJが約110、三井住友FGが約108、みずほFGが約106、TOPIXが約101となります。

終点だけを見ても、銀行株の強さはかなり明確です。

利上げ後に一直線で上昇したわけではない

ただし、利上げ後に買えば、そのまま毎日上がったわけではありません。

三菱UFJは6月17日の3,272円から上昇した後、6月末には3,200円台まで下落しました。みずほFGも一度上昇した後、6月末に調整しています。

その後、7月に入って3行とも再び上昇しました。

つまり、発表直後の勢いだけで一方向に買われたわけではありません。一度調整を挟んでも再び上昇したことから、今回の利上げだけでなく、その先の金利正常化まで意識された可能性があります。

一方で、利上げ直後の高値で買っていれば、一時的に含み損になった場面もありました。

「銀行株なら利上げ後に買えばよい」というほど、単純な値動きではありません。

なぜメガバンク株は強かったのか

中心にあったのは、国内金利上昇による資金利益改善への期待だと思います。

貸出金利や有価証券の運用利回りが上がれば、超低金利下よりも銀行は利益を出しやすくなります。

また、株価は今回の利上げだけでなく、その後の追加利上げまで先回りして織り込んだ可能性があります。

ただし、株価上昇のすべてを利上げだけで説明するのは雑です。

メガバンク各社には、増益や増配、自社株買い、政策保有株の売却といった材料もあります。金利正常化への期待に、業績と株主還元への評価が重なったと見る方が自然です。

3行すべてがTOPIXを上回った

今回は三菱UFJが約10%、三井住友FGが約8%、みずほFGが約6%の順となりました。

みずほFGもTOPIXを約5.3ポイント上回っており、1社だけが買われたのではなく、銀行株全体が強かったと見ています。

ただし、過去1か月の上昇率と、これからの投資妙味は別です。

今回最も上がった三菱UFJが、今後も最も有望とは限りません。反対に、上昇率が小さかったみずほFGを「出遅れ」と判断するのも早いと思います。

自分は「買うか」より「持ち続けるか」を考える立場

自分の場合、メガバンク株をこれから買うかどうかを考える段階ではありません。

2025年12月末の野村證券口座では、三菱UFJを35,000株、三井住友FGを39,900株、みずほFGを2,090株保有していました。評価額は3行合計で約3億円です。

利上げ後に3行がそろってTOPIXを上回ったことは、保有者として素直にうれしい結果です。

長く続いた低金利の時代から銀行株を保有し、金利正常化を待ってきた判断は、少なくとも株価面では報われました。

ただし、株価が上がれば、銀行株が資産全体に占める割合も高くなります。

3行がそろって上がる日は資産全体も大きく増えますが、逆に銀行株が売られれば、同じ規模で減る状態です。上昇はうれしいものの、以前より銀行株への集中が重くなった実感があります。

今考えるべきなのは、銀行株を買うかではなく、ここまで上昇した主力株をどこまで持ち続けるかです。

保有を継続する判断と、現在の株価から買い増す判断は分けなければなりません。

以前の銀行株には、低PBR、高配当、金利正常化期待という分かりやすい割安感がありました。現在も金利上昇の恩恵は期待できますが、昔と同じ安さが残っているとは言いにくくなっています。

保有者として考えていること
金利正常化を見込んだ保有は報われました。ただし、株価上昇によって銀行株への資産集中も強まっています。保有を続けることと、現在の株価から買い増すことは別に考えます。

金利上昇は無条件の追い風ではない

金利が上がれば、貸出金利だけでなく預金金利も上がります。

長期金利が急上昇すれば、保有債券の評価損が拡大する可能性もあります。景気が悪化すれば、貸出需要の減少や与信費用の増加も考えられます。

また、株価が追加利上げを織り込んでいる場合、利上げ停止や利下げ観測が出ただけでも反落する可能性があります。

注意点
メガバンクに都合がよいのは、金利の急騰ではありません。景気を壊さない程度に、緩やかに金利が上がることです。

まとめ

日銀利上げ後の約1か月では、メガバンク3行すべてがTOPIXを上回りました。「利上げは銀行株に追い風」という理屈は、株価面でも確認できたと思います。

ただし、約6~10%上昇した現在は、追い風の有無より、その期待がどこまで株価に織り込まれたかを見る段階です。

自分は引き続き保有しますが、保有継続と今からの買い増しは分けて考えます。上昇を喜ぶだけでなく、さらに強まった銀行株への集中にも注意したいと思います。

2026年8月4日火曜日

INPEXで約322万円の利益①|含み損を抱えたまま、ナンピンとレンジ売買でしのいだ前史

今回は、INPEXの取引を振り返ります。

INPEXの取引全体では、売買履歴上、約322万円の利益になっています。

ただし、2025年までの取引は、きれいに利益を積み上げたものではありませんでした。

2022年に含み損ポジションを残し、2023年はナンピンとレンジ売買でしのぎ、2024年の上昇でようやく楽になった取引です。

今回の記事の本命は、2026年のイラン戦争とホルムズ海峡問題をきっかけに、原油相場が乱高下した局面です。
その相場にINPEX株も大きく反応し、そこで積極的に売買したことが、最終的な利益につながりました。

今回は、その前段階として、2022年から2025年までのINPEX取引を振り返ります。

この記事のポイント
・INPEX全体では約322万円の利益になった
・ただし2025年までは、含み損を抱えながらナンピンとレンジ売買でしのいだ取引だった
・2024年春の上昇でようやく苦しい状態を抜け、2026年の原油相場乱高下へつながった

INPEXに入った理由

INPEXに入った理由は、原油関連銘柄で、配当も狙えると思ったからです。

短期売買で入っても、下がれば配当を受け取りながら持てばよい。
場合によっては現引きして、長期保有してもよい。

そう考えていました。

ただ、これは現物ならまだしも、信用取引では少し甘い考えでした。

配当がある銘柄でも、信用で含み損になると、日々の評価損や維持率の方が気になります。
金利もかかります。

「配当があるから持てる」と思っていても、信用で含み損になると、心理的な重さはかなり違います。

この点は、INPEXの取引で実感することになりました。

売買履歴を株価チャートに重ねてみる

まず、2022年から2025年までのINPEXの株価チャートに、自分の売買履歴をプロットした図です。

※2022年から2025年までのINPEX株価推移と、主な売買ポイントをプロットした図です。

図で見てほしい点
・2022年11月末の買いが、その後の含み損ポジションになったこと
・2023年前半に1,400円台で買いと売りを繰り返していること
・2024年春の上昇で、ようやく苦しい状態から抜け出したこと

1つ目は、2022年11月末の買いが、その後の含み損ポジションになったことです。

短期売買のつもりで入ったものの、株価下落によって3,000株が残りました。

2つ目は、2023年前半に1,400円台で買いと売りを繰り返していることです。

下がったところで買い、少し戻ったところで返済売りする形になっています。

3つ目は、2024年春の上昇で、ようやく苦しい状態から抜け出したことです。

それまでは利益確定の売りがあっても、含み損ポジションを抱えながらの売買でした。

つまり、売買履歴だけを見ると利益確定が並んでいます。
しかし、チャートに重ねると、含み損を抱えながら、その周辺で何度も売買していたことが分かります。

これが、2025年までのINPEX取引の実態でした。

2022年、短期売買のつもりが含み損ポジションを残す

INPEXの取引は、2022年から始まっています。

最初は短期売買のつもりでした。

信用で買って、上がったところで返済売りをする。
利益が出れば、それで終わり。

実際、2022年の売買履歴だけを見ると、利益は出ています。

主な取引 売買履歴上の実現損益
2022年 信用買い8,000株、信用返済5,000株 +196,170円

数字だけ見れば、悪くありません。

ただし、ここで重要なのは、3,000株の買いポジションが残ったことです。

これは、利益を伸ばすためにあえて残したポジションではありません。
株価が下落し、その3,000株が含み損になっていたため、返済できずに残ったポジションです。

2022年11月30日に、INPEXを3,000株、1,543円で信用買いしています。
このポジションが、その後の株価下落で含み損となり、翌年に持ち越す形になりました。

図でも、11月末の買いのあと、株価が1,500円前後から下方向に動いていることが分かります。

返済した分だけを見れば利益です。
しかし、含み損のポジションは残っている。

この構図が、翌年の2023年につながっていきます。

原油関連なら安心、という見方は少し甘かった

2022年は、原油価格が大きく動いた年でもありました。

前半は原油価格が高騰しましたが、その後はピークアウトし、下落に転じていきました。

INPEXは原油関連銘柄です。
当然、原油価格の動きは株価にも影響します。

自分としては、原油関連だから大きく崩れにくい。
配当もあるから、多少下げても持てる。

そう考えていました。

しかし、原油価格そのものが下落に転じれば、INPEX株にとっても逆風になります。

ここは、今振り返ると少し甘かったと思います。

「原油関連だから安心」ではありません。
原油関連だからこそ、原油価格が下がれば素直に影響を受けます。

しかも信用で買っているため、株価が下がれば含み損はすぐに重くなります。

2022年の終わりに残った3,000株の含み損ポジションは、その甘さが最初に表れた部分だったと思います。

2023年、含み損を抱えたレンジ売買になる

2023年は、INPEX取引の中でも苦しい時期でした。

売買履歴上では、2023年も利益になっています。

主な取引 売買履歴上の実現損益 配当入金
2023年 信用買い24,000株、信用返済22,900株、現引100株、現物買付100株 +685,298円 87,194円

数字だけ見ると、かなりうまく売買しているように見えます。

しかし、実感としては苦しい取引でした。
理由は、全体では常に含み損を抱えていたからです。

2022年に残した3,000株の買いポジションが重くなっていました。
そのうえで、2023年は株価が一気に上へ抜けるというより、レンジ内で動くような状態でした。

そこで、自分は下がったところでナンピンし、少し戻ったところで返済売りをして利益を取っていました。

チャートに売買を重ねると、この動きはかなり分かりやすいです。

2023年前半は、1,400円台で買い、少し戻ったところで売る取引が続いています。
しかし、最初に残った含み損ポジションがあるため、全体としてはすっきりしません。

返済した分は利益になる。
でも、含み損のポジションはまだ残っている。

この状態では、売買履歴上の利益ほど気持ちは楽になりません。

利益確定していても、全体では苦しい

2023年のINPEX取引で一番しんどかったのは、個別の取引では勝っているのに、全体では含み損だったことです。

売買履歴だけを見ると、利益確定の数字が並びます。
しかし、証券口座を見ると、含み損の建玉が残っています。

利益を出しているはずなのに、気持ちは全然軽くなりません。

これは、ナンピンを使ったレンジ売買でよく起きる状態だと思います。

下がったところで買う。
少し戻ったところで売る。
その部分だけを見れば勝ちです。

しかし、最初に高く買ったポジションや、さらに下がって含み損になったポジションが残っていると、全体の状況は改善していません。

反省点
利益を出しているように見えても、本当は含み損を先送りしているだけかもしれない。
2023年のINPEXは、まさにこの状態でした。

ナンピンで乗り切れたが、きれいな勝ち方ではない

2023年のINPEXでは、ナンピンとレンジ売買によって、何とか利益を出していました。

下がったところで買う。
戻ったところで一部を返済する。
利益が出たら、また次の下落を待つ。

うまくいけば、含み損を抱えながらでも、少しずつ損益を改善できます。

ただし、これはきれいな勝ち方ではありません。

株価がレンジ内で動いてくれたから成立しただけです。
もし株価がさらに下に抜けていたら、ナンピンした分だけ傷が深くなっていた可能性があります。

INPEXは配当がある銘柄です。
そのため、「最悪、持てばよい」という気持ちがありました。

この安心感は、簡単に投げ売りしなくて済むという面ではプラスです。

ただし、含み損の処理を先送りしやすくなるという悪い面もあります。

2023年は、まさにこの悪い面が出た時期だったと思います。

2024年の上昇で、ようやく乗り切る

2024年に入ると、INPEXの取引は少し楽になっていきます。

チャートを見ると、2024年春に株価が大きく上昇しています。
この上昇によって、2023年のような含み損を抱えたレンジ売買から、ようやく全体として利益を出しやすい状態になりました。

ここは、自分の売買が完璧だったというより、相場に助けられた面が大きいと思います。

もちろん、含み損の中で投げずに持ち続けたことや、ナンピンしていたことが、後の利益につながった面はあります。

ただ、2024年に株価が上昇してくれなければ、2023年の含み損状態はさらに長引いていた可能性があります。

ナンピンして助かった。
含み損を耐えて利益になった。
だから次も同じようにすればよい。

そう考えるのは危険です。

今回は、2024年に上昇へ転じたことで助かった面が大きい。
ここは自分の売買を振り返るうえで、かなり重要です。

2025年は現引き株を保有し、次の転機を待つ形になった

2025年は、INPEXを積極的に売買する時期ではありませんでした。

2024年に上昇へ転じた後、ある程度上昇しきったように見えたためです。

そのため、短期売買でさらに利益を取りにいくというより、それまでに現引きした株を長期保有する局面でした。

図でも、2025年前半までは大きく攻めているというより、売買はかなり少なくなっています。

この時点では、INPEXは短期売買の主役ではなく、配当を受け取りながら保有する銘柄に近くなっていました。

ただ、その状態で持ち続けていたことが、結果的には2026年の転機につながります。

イラン戦争とホルムズ海峡問題によって、原油相場が再び大きく動く局面が来たからです。

まとめ

2025年までのINPEXは、きれいに勝った取引ではありませんでした。

2022年に含み損ポジションを残し、2023年はナンピンとレンジ売買でしのぎ、2024年の上昇でようやく楽になった取引です。

今回、売買履歴をチャートに重ねてみると、その流れはかなり分かりやすくなりました。

利益確定の売りは何度もあります。
ただ、その裏側では含み損ポジションを抱えながら、下がったところで買い、戻ったところで売る取引を繰り返していました。

それでも、現引きした株を残し、INPEXを見続けていたことで、2026年の転機につながりました。

次に来たのが、イラン戦争とホルムズ海峡問題です。

原油相場が乱高下し、INPEX株も大きく動きました。

第2部では、この局面でどう売買し、約322万円の利益につながったのかを振り返ります。

2026年8月2日日曜日

日銀はなぜ利上げしたのか①|物価、長短金利、国債市場の変化を整理する

日銀の利上げから約1か月が経ちました。

その間、三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGの株価は、TOPIXを大きく上回っています。

自分にとってメガバンク3行は主力株です。特に三井住友FGと三菱UFJの保有額は大きく、銀行株の値動きは資産全体にもかなり影響します。

利上げ後の株価だけを見れば、銀行株には追い風でした。

ただ、その答え合わせの前に、日銀がなぜ利上げしたのかを整理します。

足元の消費者物価指数は、前年同月比の伸びが以前より鈍化しています。それでも日銀が政策金利を引き上げた理由は何なのか。

今回は、物価、短期金利と長期金利、イールドカーブ、国債買い入れの関係を簡潔に整理します。

この記事のポイント
・物価上昇率が鈍化しても、物価水準は高いまま
・日銀は短期金利を正常化し、長期金利は市場形成へ戻したい
・緩やかな金利上昇は銀行に追い風だが、急騰は別のリスクになる

CPIの伸びが鈍化しても、物価は下がっていない

日銀が利上げを判断するうえで、重要な材料の一つが物価です。

2026年5月の全国消費者物価指数は、2020年を100とした総合指数が113.5、生鮮食品を除く指数が113.0でした。

前年同月比では、総合が1.5%、生鮮食品を除く指数が1.4%の上昇です。

この数字だけを見ると、物価上昇率は2%を下回り、インフレは落ち着いてきたようにも見えます。

ただ、上昇率が鈍化したことと、物価が以前の水準へ戻ったことは別です。

指数そのものは2020年の100から113を超えており、物価水準は高いままです。

※前年同月比ではなく、2020年を100とした物価水準の推移です。

日銀が見ているのも、単月のCPIだけではありません。

賃金が上がり、企業が人件費や仕入れ価格の上昇を商品やサービスへ転嫁する。そうした賃金と物価の循環が続くかを見ています。

今回の利上げは、足元のCPIが高いから機械的に金利を上げたという話ではありません。

物価水準が切り上がり、賃金と価格が一緒に上がる状態へ変わりつつある。その中で、超低金利を続ける必要性が薄れたと判断したのでしょう。

日銀は金利をどう動かしたいのか

金利といっても、短期金利と長期金利では決まり方が違います。

短期金利は、日銀の政策金利の影響を強く受けます。

今回、日銀は無担保コール翌日物金利を1.0%程度にする方針を決めました。銀行同士が短期間で資金を貸し借りするときの金利で、預金金利や短期の貸出金利にも影響します。

一方、長期金利の代表は10年国債の利回りです。

長期金利は、将来の物価、景気、追加利上げ、国債需給、海外金利などを市場が織り込んで動きます。

短期金利と長期金利の違い
短期金利は日銀が動かす。
長期金利は市場が将来を見て動かす。

日銀が目指しているのは、すべての金利を一気に上げることではありません。

短期金利は政策によって正常化する。
長期金利は市場で形成される状態へ戻す。
ただし、市場が混乱するほどの急上昇は抑える。

この三つが基本だと考えています。

長期金利が急に上がれば、企業の借入や住宅ローンの負担が増えます。国債価格も下がり、銀行や保険会社が持つ債券に評価損が出る可能性があります。

そのため、日銀が望んでいるのは金利の急騰ではなく、景気や物価を壊さない範囲で、超低金利から徐々に抜け出すことです。

イールドカーブと銀行の利ざや

短期から長期まで、期間ごとの金利を並べた線をイールドカーブと呼びます。

一般的には、短期金利より長期金利の方が高くなり、右肩上がりの形になります。

長期金利が短期金利より大きく上がり、右肩上がりの傾きが強くなる状態をスティープ化と呼びます。

※短期金利より長期金利の上昇幅が大きくなった状態のイメージです。

イールドカーブが銀行株に注目される理由は、銀行の利ざやと関係するからです。

銀行は預金などで資金を集め、貸出や有価証券運用に回します。

そのため、短期金利より長期金利が高い状態は、貸出金利や運用利回りと調達金利の差が広がり、収益改善につながるという期待を持たれやすくなります。

自分は低金利が続く中でもメガバンク株を長く保有してきました。金利正常化は、メガバンクを長く保有してきた理由の一つでもあります。

ただし、金利は上がれば上がるほどよいわけではありません。

長期金利が急騰すれば、銀行が保有する債券の評価損が膨らみます。金利負担に耐えられない企業が増えれば、貸倒れや与信費用が増える可能性もあります。

金利上昇の注意点
銀行にとって望ましいのは、急激な金利上昇ではありません。景気を壊さない程度に、緩やかに金利が上がることです。

国債買い入れを減らす意味

長期金利には、日銀の国債買い入れも影響します。

日銀はこれまで、大量の国債を買うことで長期金利を低く抑えてきました。

その買い入れを減らせば、市場がより多くの国債を引き受ける必要があります。買い手が弱ければ国債価格は下がり、利回りは上がります。

ただし、買い入れを急に減らして長期金利が急騰すれば、国債市場は不安定になります。

そのため日銀は、国債市場を少しずつ市場の価格形成へ戻しながら、急激な金利上昇には対応するという難しい運営を求められています。

自分としては、利上げの有無だけでなく、長期金利がどの速さで上がるかも重要だと考えています。

銀行に追い風でも、金利上昇が急すぎれば、債券評価損や景気悪化という別のリスクが出てくるからです。

第1部のまとめ

日銀は、物価水準の上昇と賃金・価格の循環を見ながら、超低金利を少しずつ正常化しようとしています。

短期金利は政策で引き上げ、長期金利は市場形成へ戻す。ただし、急騰は避ける。これが現在の金利運営に近いと考えています。

第1部の結論
第1部で整理したのは、利上げが銀行株の追い風になるまでの理屈です。

第2部では、その理屈が実際の株価でも確認できたのかを、三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGとTOPIXの推移を比較して振り返ります。

日銀利上げから1か月②|メガバンク3行はTOPIXをどれだけ上回ったのか

第1部では、日銀がなぜ利上げしたのか、短期金利と長期金利、イールドカーブの関係を整理しました。 今回は、その答え合わせです。 日銀利上げ後の約1か月で、三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGは、いずれもTOPIXを上回りました。 日本株全体が...