2026年5月30日土曜日

【実録】ニデックで学んだトレードの現実①|不適切会計問題で下落した株を買った記録

今回から、ニデックの取引を振り返っていきます。

ニデックといえば、旧日本電産。モーター関連の大手企業であり、日本を代表する製造業のひとつです。

自分の中でも、ニデックは単なる小型株や仕手株ではなく、一定の事業基盤を持った大企業という認識でした。

ただ、2025年のニデックは大きく揺れました。不適切会計処理の疑義、第三者委員会の設置、監査法人の意見不表明、中間配当の無配、業績予想の未定、自社株買いの中止。

普通に考えれば、かなり手を出しにくい銘柄です。しかし、自分はその下落局面でニデックを買いました。

今回はその第1部として、2025年9月の最初の買いから、10月24日の急落買いまでを振り返ります。

ニデックで学んだトレードの現実① 不適切会計問題で下落した株を買った記録

2025年のニデック取引は、悪材料が出た後から始まった

2025年のニデック取引で最初に買ったのは、9月4日でした。

この前日、ニデックは不適切会計処理の疑義を受けて、第三者委員会を設置すると発表していました。

報道では、中国子会社の購買一時金に関する不適切会計疑義に加え、資産評価減の時期を恣意的に検討していた可能性なども調査対象になっていたとされています。

つまり、自分が買ったのは、悪材料が出る前ではありません。すでに不適切会計問題が表面化した後です。

約定日 取引内容 株数 平均単価 損益
2025/09/04 信用買新規 1,000株 約2,576.7円
2025/10/06 信用売決済 1,000株 約2,647.9円 +67,026円

9月4日に1,000株を買い、10月6日に売却。利益は67,026円でした。

この取引だけを見ると、そこまで大きな勝負ではありません。悪材料が出た後に買い、反発したところで売る。短期売買としては、まずまずきれいに決まった取引でした。

ただ、この時点でも問題が解決したわけではありません。むしろ、ニデックの不透明感はここからさらに強くなっていきます。

不正会計を軽く見ていたわけではない

ニデックの不適切会計問題については、当初は数億円レベルと報道されていました。

ただ、自分はそれを見て、正直なところ「本当に数億円で済むのか?」とは思っていました。

こういう問題は、最初に出てくる金額よりも、後から広がることがあります。調査が進めば、対象期間が広がるかもしれない。別の会計処理が問題になるかもしれない。経営陣の関与や内部管理体制の問題に広がるかもしれない。

だから、単純に「数億円なら軽い」と見ていたわけではありません。不正会計や不適切会計という言葉は、やはり重いです。

ただ、それでも一方で、自分はこうも考えていました。

「ニデックという会社が傾くような話ではないのではないか」

自分が見ていたのは、問題があるかどうかではありません。問題はある。それは間違いありません。

ただ、その問題が会社の存続に関わるレベルなのか。それとも、信用問題として一時的に大きく売られている状態なのか。そこを見ていました。

ニデックの事業基盤や企業規模を考えると、少なくとも会社が傾くようなレベルではない可能性が高い。そう判断して、最初の買いを入れました。

結果として、この9月の取引は小幅ながら利益になりました。

10月23日、さらに悪材料が重なる

しかし、ニデックの問題はそこで終わりませんでした。

2025年10月23日、ニデックはかなり重い発表を行います。

2026年3月期の中間配当を無配にする。期末配当予想も未定にする。通期業績予想も未定にする。さらに、自社株買いも中止する。

不適切会計処理の疑義に関する調査が続いていることが理由でした。

これは、投資家から見るとかなり嫌な発表です。

不適切会計の疑義だけでも重いのに、そこへ無配、業績予想未定、自社株買い中止が重なった。株主還元も止まり、業績の見通しも出せない。市場が売る理由としては十分でした。

この時点で、ニデックはかなり手を出しにくい銘柄になっていました。

それでも自分は、ここで再び買いに向かいます。

理由は、9月の時と同じです。問題は重大。ただし、会社が傾くほどではない。株価は悪材料に対して、かなり過剰に反応しているのではないか。

そう考えました。

10月24日、急落したところを買う

2025年10月24日、自分はニデックを買いました。

この日は、前日の発表を受けて株価が大きく下落した日です。

報道でも、ニデック株は不適切会計の疑義を背景に、中間配当無配、業績予想未定、自社株買い中止が嫌気され、大幅続落したとされています。

この日の取引は、同日内でまとめると以下です。

約定日 取引内容 株数 平均単価 損益
2025/10/24 信用買新規 2,000株 2,277円
2025/10/24 信用売決済 2,000株 約2,445.9円 +336,553円

2,000株を2,277円で買い。その日のうちに、2,445円台で売却。利益は336,553円でした。

結果だけ見れば、かなりうまくいった取引です。

悪材料で急落したところを買い、同日中の反発で売る。短期売買としては理想に近い形でした。

ただ、実際にはかなり怖い場面でした。

ニデックは単に株価が下がっていただけではありません。不適切会計問題があり、監査法人の意見不表明もあり、さらに無配、業績予想未定、自社株買い中止まで出ている。

普通なら、ここで買うのは避けるところです。

それでも買ったのは、やはり会社の体力を見ていたからです。

不正会計ネタは怖い。ただし、ニデックがこの問題で傾くとは思わなかった。

その判断で、急落を拾いました。

第1部の取引結果

第1部で扱う取引をまとめると、以下の通りです。

期間・日付 内容 損益
2025/09/04〜10/06 第三者委員会設置後に買い、反発で売却 +67,026円
2025/10/24 無配・業績未定・自社株買い中止後の急落を同日売買 +336,553円
第1部の合計利益
+403,579円

ここまでの取引だけを見ると、かなり順調でした。

悪材料が出た銘柄を買い、反発で利益を取る。しかも、10月24日の急落局面では、同日中に30万円超の利益になっています。

ただ、この成功が、次の取引につながっていきます。

うまくいったことで、さらに踏み込むことになる

10月24日の取引は、結果として成功でした。

しかし、これでニデックの問題が解決したわけではありません。

むしろ、この後にさらに厳しい局面がやってきます。

特別注意銘柄への指定。さらなる株価下落。ストップ安水準での買い。

10月24日に急落を拾って利益を取れたことで、自分の中には、

「やはり売られすぎではないか」

という感覚が強くなっていました。

これが、次の買い下がりにつながっていきます。

今振り返ると、第1部の取引はまだ短期で逃げられていた分、リスクは限定的でした。

本当に危なかったのは、この後です。

10月28日以降、自分はさらに深い下落局面でニデックを買い下がっていきます。

それは第2部で振り返ります。

2026年5月28日木曜日

【月次取引記録】2026年4月の売買振り返り|銀行株を利確し、決算跨ぎに向けて買い直した月

2026年4月の取引を振り返ります。

今年に入ってからは、比較的うまくいっている月が多いです。
その中でも4月は、かなり納得感のある取引ができた月だったと思います。

理由は、単に利益が出たからではありません。

3月に仕込んでいた銀行株を、4月の上昇局面でしっかり利確できたこと。
その利益を主な原資にして、TDKやDMG森精機など、以前の決算暴落時に拾っていた建玉を現引きできたこと。
さらに、5月の決算跨ぎに向けて、金融株や地銀株、大きく下落した銘柄を買い直せたこと。
この3つができた点で、4月はかなり上手く立ち回れた月だったと思います。

4月の確定利益と現引き

まず、4月の結果をまとめておきます。

4月の信用取引の売決済を集計すると、確定利益は5,354,096円でした。

※信用取引の売決済損益を集計しています。現引、配当金、MRFの収益分配などは除外しています。

4月の利確・損切り銘柄一覧

銘柄 決済株数 確定損益 コメント
三井住友フィナンシャルグループ4,000株+1,633,590円3月仕込み分を上昇局面で利確
ベイカレント2,000株+1,099,925円反発局面で利確
三井住友トラストグループ3,000株+466,863円金融株上昇を使って利確
Sansan10,000株+437,746円短期反発を利確
TDK4,000株+429,777円一部利確し、別建玉は現引き
INPEX5,000株+377,203円短期回転
ソフトバンクグループ1,600株+249,707円詳細は別記事で振り返り済み
ふくおかFG800株+236,883円地銀系の上昇を利確
ラクス5,000株+127,390円反発局面で利確
野村マイクロ・サイエンス1,000株+113,205円短期反発を利確
オリンパス4,000株+85,110円反発局面で整理
MonotaRO3,000株+56,264円短期反発を利確
MIRAINIホールディングス3,000株+40,433円小幅利確
合計 +5,354,096円

4月の利益の柱は、銀行株でした。

特に三井住友FGの利確が大きく、三井住友トラストグループ、ふくおかFGも含めると、金融株の上昇をうまく利益に変えられた月だったと思います。

なお、ソフトバンクグループについては、すでに別記事で詳しく振り返っています。4月の決済では銘柄単位ではプラスになりましたが、中身としては高値で買った建玉の損失を、安く買い直した建玉の利益で吸収した形でした。そのため、今回の記事では詳細には触れず、4月の確定利益の一部として整理しています。

4月に現引きした銘柄

銘柄 現引き株数 平均単価 概算金額 意図
TDK1,000株1,987.5円1,993,940円決算暴落時に拾った建玉を現物化
三井住友トラストグループ400株4,891円1,959,261円金融株の一部を現物化
DMG森精機500株約2,402.3円1,210,075円決算暴落時に拾った建玉を現物化
合計 1,900株 5,163,276円

4月は、信用建玉の一部を現引きしています。

現引きとは、信用買いで建てたポジションを、現金を使って現物株に移す取引です。信用取引のまま持ち続けると、金利や維持率の管理が必要になりますが、現物株にすれば長期で保有しやすくなります。

今回の現引きで特に意識していたのは、以前の決算時に大きく下落したところで買っていた銘柄を、現物株として残すことでした。

TDKやDMG森精機は、決算発表後に大きく売られたタイミングで拾っていた建玉です。短期の反発を狙って買った部分もありますが、値ごろ感のある水準で買えていたため、すべてを売却するのではなく、一部を現物化して保有を続ける判断をしました。

ここで大きかったのが、4月に確定した利益です。

今回の現引きは、別に現金を大きく追加して無理に行ったというより、4月に利確できた利益を主な原資として、信用建玉を現物株に移した意味合いが強いです。

つまり、4月の利益は「使ってしまった利益」ではなく、持ち続けたい株を現物化するための原資になりました。4月の現引きは単なる資金移動ではなく、短期で利益を取りに行く信用建玉と、中長期で残したい現物株を分ける作業でした。

4月の相場環境

4月の日本株は、大きく反発した月でした。

日経平均株価は前月末比8,221円20銭高、上昇率16.09%となり、2カ月ぶりに上昇しました。月間の上げ幅は過去最大でした。中東情勢への警戒感後退に加えて、AI関連銘柄への資金流入も相場を押し上げました。日経半導体株指数も月間で36.17%上昇し、過去最大の上昇率を記録しています。

ただ、自分の4月の取引は、単純に「上昇相場に乗った」というものではありません。大きな流れで見ると、4月は、3月に仕込んだ銀行株を、4月の上昇局面で利確した月であり、同時に、5月の決算跨ぎに向けて、新たにポジションを作った月でした。

4月の取引全体像

区分 内容
利確3月に仕込んだ銀行株を、上昇したタイミングで売却
整理高値掴みしたポジションの一部を処理
新規買い5月決算を意識して、金融株・地銀株・大きく下落した銘柄を購入
現引き利確した利益を主な原資に、持ち続けたい信用建玉を一部現物化

4月は、かなり売買の多い月でした。

上がったものを売って終わりではありません。その利益を使って、持ち続けたい建玉を現引きし、さらに次の決算跨ぎに向けた買いも進めています。

特に大きかったのは銀行株です。3月の段階で、金利上昇メリットや決算期待、増配期待を意識して銀行株を仕込んでいました。4月に相場が反発し、銀行株も上昇したため、そこでいったん利益を確定しました。

3月に仕込んだ銀行株を、4月の上昇で利確

今回の利確で一番大きかったのは、銀行株です。

3月の時点では、銀行株にはまだ上値余地があると考えていました。

理由は、金利上昇メリットです。銀行株は、金利が上がる局面では利ざや改善への期待が出やすく、決算や増配への期待も高まりやすいです。

そのため、3月に銀行株を仕込んでいました。

そして4月に相場全体が急反発しました。日経平均は月間で大きく上昇し、AI関連・半導体関連が相場を引っ張りました。こうした地合いの改善もあり、銀行株も上昇しました。

ここで欲張って持ち続けるのではなく、いったん利益を確定しました。

信用取引では、含み益を見ているだけでは利益になりません。上がったところで売って、初めて利益になります。

今回は、3月に仕込んだ銀行株を4月の上昇局面で現実の利益に変えられた点は、良かったと思います。

そして、この利確は単なる利益確定で終わりませんでした。確定した利益を主な原資にして、TDKやDMG森精機など、以前の決算暴落時に拾っていた建玉を現引きできました。これにより、信用ポジションの一部を現物株に移し、今後も保有しやすい形に整理できたことも、4月の大きな成果だったと思います。

4月の新規買い

4月は利確だけでなく、新規買いもかなり多い月でした。

ただし、これは単に「上がりそうだから買った」というより、決算跨ぎをかなり意識した買いでした。

4月後半から5月にかけては、3月期企業の本決算発表が本格化します。

自分としては、金融系、とくにメガバンクだけでなく、地銀系にも注目していました。

理由は、金利上昇局面の恩恵を受けやすく、決算内容も比較的良さそうに見えたこと。さらに、業績が堅調であれば、増配や株主還元の強化も期待できると考えたためです。

4月の新規買い一覧

銘柄 新規買い株数 平均買付単価 概算買付額 買いの意図
INPEX5,000株4,075.7円20,378,700円下落後の反発狙い
三菱UFJフィナンシャル・グループ4,000株2,764.5円11,058,000円決算跨ぎ・増配期待
三井住友トラストグループ2,000株5,201.2円10,402,400円決算跨ぎ・金融株買い
野村ホールディングス8,000株1,297.1円10,376,500円金融株・押し目買い
サイゼリヤ1,600株5,545.0円8,872,000円大幅下落後の反発狙い
Sansan6,000株1,302.8円7,816,700円下落後の買い直し
オリエンタルランド3,000株2,383.4円7,150,250円大幅下落後のナンピン
NTT40,000株152.2円6,086,000円下落後の高配当・反発狙い
筑波銀行10,000株595.0円5,950,000円地銀決算・増配期待
三井住友フィナンシャルグループ1,000株5,303.0円5,303,000円決算跨ぎ・増配期待
ふくおかFG800株6,279.5円5,023,600円地銀決算・増配期待
栃木銀行5,000株959.7円4,798,600円地銀決算・増配期待
トヨタ自動車1,500株3,075.0円4,612,500円下落後の反発狙い
いよぎんHD1,500株3,008.6円4,512,900円地銀決算・増配期待
ちゅうぎんFG1,500株2,898.6円4,347,950円地銀決算・増配期待
千葉銀行2,000株2,026.4円4,052,800円地銀決算・増配期待
キヤノン1,000株4,048.0円4,048,000円下落後の反発狙い
スズキ2,000株1,744.5円3,489,000円大幅下落後の反発狙い
富士通1,000株3,188.0円3,188,000円押し目買い
野村マイクロ・サイエンス1,000株3,175.0円3,175,000円下落後の反発狙い
ミンカブ7,300株429.5円3,135,600円大幅下落後の反発狙い
共立メンテナンス1,000株2,550.3円2,550,250円押し目買い
本田技研工業2,000株1,263.5円2,527,000円大幅下落後の反発狙い
サイボウズ1,000株2,182.4円2,182,400円押し目買い

4月の新規買いは、大きく分けると二つです。

一つは、決算跨ぎを意識した金融株買いです。メガバンクだけでなく、地銀系にも広げて買っています。金利上昇局面では、銀行の収益環境が改善しやすく、決算内容や増配への期待が持ちやすいと考えました。

もう一つは、大きく下落した銘柄の押し目買いです。オリエンタルランド、サイゼリヤ、自動車株、NTT、INPEX、Sansan、ミンカブなどは、直近で大きく下げていた銘柄を中心に拾っています。強い銘柄を高値で追いかけるというより、売られた銘柄の反発を狙う買いでした。

金融株・地銀株を買った理由

4月に銀行株を利確したからといって、銀行株への見方が弱気になったわけではありません。

むしろ、5月の決算を考えると、まだチャンスはあると見ていました。

そのため、3月に仕込んだ銀行株を4月にいったん利確したあと、改めて金融株を買い直しています。今回は、メガバンクだけでなく、地銀系にも広げました。

地銀はメガバンクほど派手ではありませんが、金利上昇局面では見直されやすい業種です。加えて、決算が良ければ増配や株主還元強化への期待も出やすいと考えました。

もちろん、決算跨ぎなのでリスクはあります。期待で買われて、決算後に材料出尽くしで売られることもありますし、増配を期待して買ったのに、期待ほどではなかった場合には下落する可能性もあります。それでも、4月時点では、下落していた金融株や地銀株にはリスクを取る価値があると判断しました。

大きく下落した銘柄も拾った

金融株以外では、大きく下落した銘柄を中心に買いました。

オリエンタルランド、サイゼリヤ、自動車株、NTT、ミンカブなどです。

いずれも、買った時点で安心して持てる銘柄というより、かなり売られていた銘柄です。下落には当然理由がありますが、4月は相場全体が急反発していたため、売られすぎた銘柄にも資金が戻る可能性があると考えました。

特に決算前は、悪材料をある程度織り込んだ銘柄が、決算をきっかけに見直されることもあります。そのため、金融株の決算跨ぎとは別に、下落銘柄の反発狙いも入れた形です。

4月の反省点

4月は、数字だけ見ればかなり良い月でした。

3月に仕込んだ銀行株を、4月の上昇局面で利確できたこと。さらに、その利益を主な原資にして、TDKやDMG森精機などを現引きできたこと。この点は、かなりうまくいったと思います。

一方で、利確したあとに新規買いも増えました。利益が出ると、次の買いに気持ちが向かいやすくなります。4月はまさにその形で、金融株・地銀株の決算跨ぎに加えて、大きく下落した銘柄も拾いました。

ただ、ポジションが増えるということは、次のリスクも増えるということです。決算跨ぎは、期待とリスクがセットです。増配期待で買っても、決算が期待外れなら下がりますし、好決算でも、事前に期待されすぎていれば売られることもあります。4月はうまく立ち回れた月でしたが、5月以降は、この買い直したポジションの結果をしっかり確認する必要があります。

まとめ

2026年4月は、かなり手応えのある月でした。

確定利益は、5,354,096円

3月に仕込んだ銀行株を上昇局面で利確し、その利益を主な原資にして、TDK、三井住友トラスト、DMG森精機を現引きしました。

つまり4月は、

  • 3月の仕込みを利益に変えた月
  • 利確した利益を、現引きの原資として活用できた月
  • 5月決算に向けて、次のポジションを作った月

今年はここまで好調な月が多いですが、その中でも4月は、利確・現引き・新規買いのバランスがかなり良かったと思います。

利確するものは利確する。
残すものは現引きして残す。
次に狙うものは決算前に仕込む。

この整理ができたという意味では、4月は今年の中でもかなり納得感のある月でした。5月は、この4月に買い直した金融株や下落銘柄が、決算発表を通じて本当に報われるのかを確認する月になります。

2026年5月26日火曜日

【メガバンク決算最終回】みずほだけ株価が戻らない理由|増資で薄まったEPSは取り戻せるのか

今回で、メガバンク決算シリーズの最終回です。

第1部では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの2026年3月期決算を比較しました。

第2部では、三菱UFJとMorgan Stanleyの関係を振り返りました。

第3部では、リーマンショック後に3メガバンクが行った大規模増資と、それによるEPS希薄化について整理しました。

今回は最終回として、もう少し株価に踏み込みます。

ちょうどこの記事を書いているタイミングで、3メガバンクの2026年3月期決算発表後の株価の反応にも差が出ました。

5月15日の決算発表を受けた翌営業日の5月18日、三菱UFJと三井住友FGは堅調に推移した一方で、みずほFGだけは大きく下落しました。

みずほの決算自体は、決して悪い内容ではありません。

2026年3月期は過去最高益となり、2027年3月期も最終利益1兆3,000億円を見込んでいます。

さらに、発行済株式数の1.0%、1,000億円を上限とする自社株買いも発表しています。

それでも株価が売られたのは、足元の好決算だけでは市場が十分に納得しなかったということだと思います。

2027年3月期の会社予想は市場コンセンサスと大きく変わらず、自社株買いも発行済株式数の1.0%にとどまります。

つまり、市場はみずほに対して、単なる過去最高益ではなく、EPSをさらに押し上げるだけの利益成長や、より大きな株主還元を求めているように見えます。

さらに、楽天銀行への出資検討も報じられ、資本を自社株買いではなく外部投資に使うのではないかという警戒感も、株価下落の一因になったように見えます。

テーマは、
みずほだけ、なぜ2006年当時の株価水準をまだ更新できていないのか。

自分はリーマンショック前からメガバンク株を保有してきました。

当時、メインで保有していたのは、みずほFGでした。

理由は、配当の魅力です。

リーマンショック前のみずほは、今の感覚とはかなり違う銘柄でした。

当時は売買単位が1株で、株価も数十万円から100万円近い水準で動いていました。

その中で、みずほの2008年3月期の年間配当は1株10,000円でした。

現在の株式ベースに直すと、100円相当です。

当時の自分にとって、この配当額の印象はかなり大きかったです。

しかし、その後の状況は大きく変わりました。

リーマンショック後、メガバンクは大規模な増資を行いました。

銀行としては、自己資本を厚くするために必要な対応だったと思います。

ただ、株主目線では、発行済株式数が増えることで、1株あたり利益であるEPSが薄まります。

この影響は、株価だけでなく配当の戻りにも表れました。

銘柄 2008年3月期配当
現在ベース
直近・予想配当 見方
三菱UFJ FG 14円 2026年3月期 86円
2027年3月期予想 96円
大きく超過
三井住友FG 約46.7円 2026年3月期予想 157円 大きく超過
みずほFG 100円相当 2025年3月期 140円
2026年3月期予想 145円
超えたが遅い

2008年3月期の配当を現在ベースで比べると、三菱UFJは14円、三井住友FGは約46.7円、みずほFGは100円相当です。

そこから現在までを見ると、三菱UFJは2026年3月期86円、2027年3月期予想96円まで増えています。

三井住友FGも、2026年3月期予想で157円まで増えています。

一方、みずほFGは2024年3月期に105円となり、ようやく2008年3月期の100円相当を超えました。

2025年3月期は140円、2026年3月期予想は145円まで増えていますが、リーマン前水準を超えるまでにはかなり時間がかかりました。

そして株価については、みずほは今なお2006年当時の水準を超えられていません。

自分はその後、みずほの株価の戻りの弱さや、収益性・株主還元の見え方を踏まえて、保有の主力をみずほから三井住友FGへ切り替えていきました。

今回の記事では、なぜみずほだけ株価の戻りが弱いのか。

それを、PERとEPS、そして発行済株式数の重さから整理してみます。

 

2006年株価を100で見ると、みずほだけが劣後している

まず、3メガバンクの株価を、2006年の株価を100として見てみます。

三菱UFJと三井住友FGは、すでに2006年当時の株価水準を超えています。

リーマンショック、マイナス金利、長期低迷を経て、ようやく過去の水準を更新してきた形です。

一方で、みずほFGは大きく回復しているものの、まだ2006年当時の水準には届いていません。

同じメガバンクでも、長期株価の回復には大きな差が出ています。

ただし、ここで単純に「みずほは割安に放置されている」と考えるのは早いと思います。

株価は、過去と比べるだけでなく、今の利益に対してどれくらい評価されているかも見る必要があるからです。

現在のPERを見ると、みずほだけが低評価ではない

現在の3メガバンクのPERを見ると、みずほだけが極端に低く評価されているわけではありません。

銘柄 株価 EPS PER
三菱UFJ FG 2,929円 186.09円 15.74倍
三井住友FG 5,702円 445.47円 12.80倍
みずほFG 6,912円 463.27円 14.92倍

みずほは、2006年比の株価回復では大きく劣後しています。

しかし、PERで見ると、みずほだけが極端に安いわけではありません。

むしろ、みずほのPERは三菱UFJに近く、三井住友FGよりは高い水準です。

つまり、みずほは株価の長期回復では出遅れているものの、現在の利益に対する市場評価では、そこまで低く見られているわけではない。

PERが3メガバンクでおおむね同じレンジにあるなら、株価の差を説明するのはPERではありません。
見るべきは、EPSです。

株価はざっくり「EPS × PER」で見る

株価は、非常にざっくり言えば、次のように考えることができます。

株価 = EPS × PER

もちろん、実際の株価は金利、景気、需給、将来期待など、さまざまな要因で動きます。

ただ、長期で見ると、EPSとPERはかなり重要です。

PERが同じような水準なら、株価を押し上げるにはEPSが伸びる必要があります。

そしてEPSは、次の式で決まります。

EPS = 純利益 ÷ 発行済株式数

ここで、リーマン後の大増資が効いてきます。

会社全体の利益が増えても、発行済株式数が大きく増えていれば、1株あたり利益であるEPSは伸びにくい。

つまり、株価が戻りにくくなります。

2006年当時、みずほだけが過剰評価だったわけではない

では、みずほだけが2006年当時に高すぎたのでしょうか。

2006年末時点の株価と、2007年3月期のEPSでPERを計算すると、次のようになります。

銘柄 2006年12月29日終値 2007年3月期EPS PER
三菱UFJ FG 1,470,000円 86,795.08円 約16.9倍
三井住友FG 1,220,000円 57,085.83円 約21.4倍
みずほFG 850,000円 51,474.49円 約16.5倍

この表を見ると、みずほだけが突出して高PERだったわけではありません。

むしろ、PERだけで見ると、一番高かったのは三井住友FGです。

みずほは三菱UFJとほぼ同じ水準でした。

また、当時の配当利回りを見ても、3メガバンクはいずれも1%未満でした。

つまり、2006年当時のメガバンク株は、今のような高配当株として買われていたわけではありません。

不良債権処理が進み、日本の銀行が復活する。景気回復で利益が伸びる。金融再生が進み、銀行株がさらに評価される。

そうした期待で買われていた時期だったと思います。

だから、みずほが2006年水準に戻っていない理由を、単純に「当時のみずほ株が高すぎたから」と片づけるのは少し違います。

EPSで見ると、三菱UFJと三井住友FGは過去を超えた

次に、2007年3月期のEPSと、2026年3月期のEPSを比較します。

株式分割や株式併合の影響があるため、比較しやすいように現在の株式ベースに直して見ます。

銘柄 2007年3月期EPS 現在ベース換算 2026年3月期EPS 判定
三菱UFJ FG 86,795.08円 約86.8円 213.17円 大きく超過
三井住友FG 57,085.83円 約190.3円 411.97円 大きく超過
みずほFG 51,474.49円 約514.7円 502.9円 ほぼ同水準、やや未達

ここが、今回の記事で一番大事なところです。

三菱UFJと三井住友FGは、現在のEPSが2006年当時を大きく超えています。

三菱UFJは約2.5倍、三井住友FGも約2.2倍です。

つまり、リーマン後の増資による希薄化を乗り越え、1株あたり利益をリーマン前の水準より大きく伸ばしてきました。

だから、PERが2006年当時と同じような水準でも、株価は2006年水準を超えることができます。

一方で、みずほFGはどうか。

2007年3月期EPSは、現在ベースで約514.7円。

2026年3月期EPSは502.9円です。

会社全体では過去最高益を出しています。

しかし、EPSで見ると、まだ2006年当時を明確に超えたとは言いにくい。

ここに、みずほの株価が2006年水準を更新できていない大きな理由があると思います。

みずほの問題は「利益が少ない」ではなく「株数が重い」

みずほは利益が戻っていないわけではありません。

むしろ、2026年3月期は過去最高益です。

2026年3月期のみずほFGは、最終利益1兆2,486億円、EPS502.9円、年間配当145円でした。

2027年3月期も最終利益1兆3,000億円、年間配当150円を見込んでいます。

銀行としての収益力は、かなり改善しています。

それでも株価が2006年水準を更新できていない。

この理由は、会社全体の利益ではなく、1株あたり利益にあります。

みずほは、リーマンショック後に大規模な増資を行いました。

2009年増資前のみずほの普通株式数は、現在ベースに直すと約12.5億株でした。
それが2009年増資後には約15.5億株、2010年増資後には約21.1億株まで増えています。
リーマン後の2回の大型増資で、現在ベースでは約8.6億株増えたことになります。
増加率にすると約69%です。

これだけ株数が増えれば、会社全体の利益が戻っても、1株あたり利益であるEPSは戻りにくくなります。

つまり、みずほは「利益が少ない」というより、株数が重い

この表現が一番近い気がします。

なぜ、みずほの増資はここまで重くなったのか

では、なぜみずほはここまで大きく株数を増やすことになったのでしょうか。

大きな理由の一つは、増資のタイミングです。

増資は、同じ金額を調達する場合でも、株価が高ければ少ない株数で済みます。

逆に、株価が大きく下がった後に増資を行うと、多くの株数を発行しなければなりません。

みずほの場合、リーマンショック後に株価が大きく下がった状態で、2009年、2010年と続けて大型増資を行うことになりました。

資本を厚くする必要があった一方で、株価が下がった後の増資だったため、発行株数が大きく膨らんだ。

これが、現在まで続く株数の重さにつながっています。

もう一つ大きかったのは、金融危機時のみずほの損失です。

みずほは2008年3月期に、サブプライムローン関連損失が国内金融機関で最大規模に膨らみました。

その後、2009年3月期には景気悪化による与信費用の増加、保有株式の下落による減損、株式関係損益の悪化も重なり、最終赤字5,800億円へ転落しました。

つまり、みずほの増資規模が大きくなった背景には、単に資本規制強化だけでなく、サブプライム関連損失、金融危機後の赤字、そして株価が下がった後に資本調達せざるを得なかったタイミングの悪さがあったと思います。

リーマン後の増資は、銀行経営としては必要だったと思います。

しかし、株主目線では、株数が増え、EPSが薄まりました。

その影響は、今もまだ残っているように見えます。

みずほは、単純に出遅れているというより、株数の重さをまだ背負っている。

総資産対比の利益率も見劣りするが、主因ではない

みずほについては、資産規模に対してどれだけ利益を出しているかも確認しておきます。

銘柄 純利益 総資産 総資産対比の利益率
三菱UFJ FG 2兆4,272億円 431.7兆円 約0.56%
三井住友FG 1兆5,830億円 328.5兆円 約0.48%
みずほFG 1兆2,486億円 約297.6兆円 約0.42%

この数字を見ると、みずほは三菱UFJや三井住友FGに比べて、資産規模対比の利益率ではやや見劣りします。

ただ、この差だけで、みずほの株価が2006年水準を大きく下回っていることを説明するのは難しいと思います。

総資産対比の利益率は、EPSを押し上げるための背景要因ではあります。

しかし、株価により直接効くのは、やはりEPSです。

現在のPERが3メガバンクで大きく違わない以上、みずほの株価劣後を説明する中心は、総資産対比の利益率よりも、発行済株式数の多さによるEPSの見劣りだと思います。

今の利益で2006年水準に戻すには、どれだけ株数を減らす必要があるのか

では、みずほが今の利益水準のまま、PERも今と同じ水準だと仮定して、2006年当時の株価水準まで戻るには、どれくらい株数を減らす必要があるのでしょうか。

2026年3月期純利益:1兆2,486億円
2026年3月期EPS:502.9円
現在株価:6,912円
現在PER:約13.7倍

この前提だと、現在の発行済株式数は約24.8億株となります。

まず、2006年末水準である8,500円まで株価を戻す場合です。

PERを今と同じ約13.7倍とすると、必要なEPSは約618円です。

現在の純利益1兆2,486億円のままEPSを618円にするには、発行済株式数を約20.2億株まで減らす必要があります。

つまり、現在の約24.8億株から、約4.6億株の削減が必要です。

割合にすると、約19%の株数削減です。

現在株価6,912円で単純計算すると、自社株買いに必要な金額は約3.2兆円になります。

次に、2006年高値付近の10,300円まで戻す場合です。

必要なEPSは約749円です。

現在の利益のままEPSを749円にするには、発行済株式数を約16.7億株まで減らす必要があります。

現在の約24.8億株から見ると、約8.2億株の削減です。

割合にすると、約33%の株数削減です。

現在株価で単純計算すると、自社株買いに必要な金額は約5.6兆円になります。

目標株価 必要EPS 必要株数 削減株数 削減率 必要な自社株買い額
8,500円 約618円 約20.2億株 約4.6億株 約19% 約3.2兆円
10,300円 約749円 約16.7億株 約8.2億株 約33% 約5.6兆円

もちろん、これはかなり単純化した試算です。

実際には、自社株買いを進めれば株価も動きます。利益も毎年変わります。PERも一定ではありません。

それでも、この試算から分かることがあります。

みずほが2006年水準まで戻るには、自社株買いだけでも相当な規模が必要になる。

つまり、自社株買いは重要ですが、それだけで一気に解決する話ではありません。

利益成長と、自社株買いと、株式消却。

この3つが組み合わさる必要があります。

増資の逆が、自社株買いと消却

リーマン後の増資は、株数を増やしました。

株数が増えれば、EPSは薄まります。

その逆が、自社株買いと消却です。

自社株買いを行い、買い取った株式を消却すれば、発行済株式数は減ります。

株数が減れば、同じ利益でもEPSは上がりやすくなります。

つまり、過去の増資で薄まったEPSを取り戻すには、利益成長だけでなく、自社株買いと消却が重要になります。

昔は、資本を守るために株数を増やしていた。

今は、余剰資本を使って株数を減らそうとしている。

この変化は、株主にとって大きいです。

3メガバンクをそれぞれどう見るか

三菱UFJフィナンシャル・グループ

三菱UFJは、利益規模が3メガバンクの中でも最大です。

Morgan Stanleyからの持分法利益も大きく、国内銀行株というより、グローバル金融株に近い面があります。

2026年3月期EPSは213.17円。

2006年当時の現在ベースEPS約86.8円を大きく上回っています。

株価が2006年水準を超えているのは、PERの上昇だけではなく、EPSそのものが大きく伸びていることが背景にあります。

三井住友フィナンシャルグループ

三井住友FGは、3メガバンクの中でも収益性や効率性の高さが目立ちます。

2026年3月期EPSは411.97円。

2006年当時の現在ベースEPS約190.3円を大きく上回っています。

現在PERは3メガバンクの中で低めです。

株価は過去水準を超えていますが、それをEPSの伸びが支えているように見えます。

自分の中では、3メガバンクの中で最も優等生的に見える銘柄です。

みずほフィナンシャルグループ

みずほは、過去最高益を出しています。

収益力は明らかに改善しています。

ただし、2026年3月期EPSは502.9円。

2006年当時の現在ベースEPS約514.7円と比べると、ほぼ同水準、やや下回る水準です。

つまり、会社全体の利益では過去最高でも、1株あたり利益ではまだ2006年当時を明確に超えていません。

発行済株式数の重さによって、EPSがまだ十分に回復しきれていない。

だからこそ、みずほを見るうえでは、自社株買いと消却が特に重要になります。

自分がこれから見るポイント

今回のシリーズを通じて、改めて感じたことがあります。

メガバンク株を見るとき、純利益だけを見てはいけないということです。

純利益はもちろん重要です。

ただ、株主にとってより重要なのは、1株あたりでどうなっているかです。

自分はリーマン前からメガバンク株を保有してきました。

当初はみずほをメインに持っていました。

その後、株価の戻りや株主還元の差を見ながら、主力を三井住友FGへ切り替えていきました。

今振り返ると、この判断は自分のメガバンク投資の中ではかなり大きかったと思います。

当時は、銀行株は景気が戻れば株価も戻ると思っていました。

しかし実際には、大増資によってEPSが薄まり、株価は長く戻りませんでした。

だから今は、純利益だけではなくEPSを見る必要があると感じています。

今後、自分が確認していきたい点

  • 純利益が伸びているか
  • EPSが伸びているか
  • 発行済株式数が減っているか
  • 自社株買いが消却まで行われているか
  • 配当が無理なく増えているか
  • PERが過度に上がりすぎていないか

特にみずほを見る場合、過去最高益という言葉だけでは判断しないようにしたいです。

その利益が、1株あたり利益としてどこまで株主に戻っているのか。

ここを見ていきたいと思います。

まとめ|みずほは出遅れではなく、EPS未回復の問題

2006年株価を100として見ると、三菱UFJと三井住友FGは過去水準を超えています。

一方、みずほはまだ過去水準に届いていません。

この差だけを見ると、みずほは出遅れているように見えます。

しかし、現在のPERを見ると、みずほだけが極端に低く評価されているわけではありません。

むしろ、三菱UFJに近い水準で評価されています。

そう考えると、本質はPERではなくEPSにあります。

三菱UFJと三井住友FGは、EPSが2006年当時を大きく超えています。

だから株価も2006年水準を超えました。

一方、みずほは過去最高益を出しているものの、EPSでは2006年当時とほぼ同水準にとどまっています。

これは、リーマン後の大増資によって増えた株数の重さが、今も残っているということだと思います。

みずほは単純に出遅れているのではない。
株数の重さをまだ背負っている。

だから、今後のみずほを見るうえで重要なのは、株価が過去水準に戻るかどうかだけではありません。

EPSが2006年当時を明確に超えるか。

自社株買いと消却で株数が減るか。

増配が継続するか。

ここを見ていきたいです。

メガバンク株は、単なる高配当株ではありません。

リーマンショック、大増資、EPS希薄化、長期低迷を経て、ようやく金利上昇と株主還元の時代に入ってきた銘柄だと思います。

だからこそ、これからも純利益だけでなく、EPS、PER、配当、自社株買いを確認しながら、自分の保有株として見続けていきたいと思います。

2026年5月25日月曜日

【SpaceX上場】儲けではなく未来に投資したい|イーロン・マスクの会社だから買いたい夢枠投資

SpaceX上場・夢枠投資

儲けるためだけではなく、未来に少しだけ参加するために。
SpaceXという会社に投資してみたい理由を書いてみます。

SpaceXが上場申請を行い、目論見書が公開されました。

SpaceXと聞くと、まず思い浮かぶのはロケットです。

しかし、目論見書や関連報道を見ていくと、もはや単なるロケット会社ではありません。

ロケット打ち上げ、Starlinkによる衛星通信、Starshipによる超大型宇宙輸送、AI、宇宙データセンター、そして火星開発。

事業内容は、正直かなりぶっ飛んでいます。

普通の企業分析であれば、売上、利益、利益率、PER、PSR、キャッシュフローなどを見て、割高か割安かを判断します。

ただ、SpaceXの場合、おそらく上場時の株価は、どんな根拠を使っても説明しにくい水準になると思います。

それでも、自分はこの会社に投資したい。

今回は、SpaceXの事業内容を整理しながら、なぜ自分がこの会社に投資したいと思うのかを書いてみます。

SpaceXはもはやロケット会社だけではない

SpaceXの原点は、もちろんロケット打ち上げ事業です。

Falcon 9、Falcon Heavy、Dragonなどを使い、商業衛星、NASA、政府・軍事関連のミッションを担ってきました。

この分野でSpaceXが大きく変えたのは、再使用ロケットです。

従来のロケットは、基本的に一度打ち上げたら使い捨てでした。

しかしSpaceXは、Falcon 9の第1段ブースターを回収し、再利用する仕組みを実用化しました。

これは、宇宙開発のコスト構造を大きく変えた実績だと思います。

宇宙開発というと、どうしても夢物語のように見えます。

しかしSpaceXは、実際にロケットを飛ばし、回収し、再利用し、宇宙輸送を事業として成立させてきました。

ここが、他の宇宙ベンチャーと大きく違うところです。

夢を語っているだけではない。実際に飛ばしてきた。失敗しても、次を作って、また飛ばしてきた。この実行力が、SpaceXの最大の強みだと思います。

現在の稼ぎ頭はStarlink

SpaceXの中で、投資対象として一番分かりやすいのはStarlinkです。

Starlinkは、低軌道衛星を大量に打ち上げ、地球上の広い地域にインターネット接続を提供する衛星通信サービスです。

山間部、離島、海上、航空機、災害地域、戦地など、通常の光回線や携帯基地局ではカバーしにくい場所にも通信を届けられます。

報道では、Starlinkは2025年に約113.9億ドルの売上を上げ、SpaceX全体の売上の大きな柱になっているとされています。SpaceX全体の売上は約186.7億ドルとされており、Starlinkがすでに中心事業になっていることが分かります。

ここで重要なのは、SpaceXが自社ロケットでStarlink衛星を打ち上げられることです。

普通の衛星通信会社であれば、衛星を打ち上げるためにロケット会社へ依頼する必要があります。

しかしSpaceXは違います。

  • 自社でロケットを作る
  • 自社で衛星を打ち上げる
  • 自社で通信網を構築する

この垂直統合が強いです。

Starlinkは、単なる通信サービスではありません。

SpaceXのロケット事業と一体になった、巨大な宇宙インフラ事業です。

この点だけを見ると、SpaceXはすでに「夢だけの会社」ではなく、実際に収益を生む通信インフラ企業でもあります。

Starshipは将来の本命

そして、SpaceXの将来性を大きく左右するのがStarshipです。

Starshipは、完全再使用を目指す超大型ロケットです。

成功すれば、Starlink衛星をより大量に、より低コストで打ち上げられるようになります。

さらに、月、火星、宇宙ステーション、宇宙データセンター構想にもつながります。

直近の試験飛行でも、Starshipはまだ完成形ではないものの、主要な目標をこなしながら前進していると報じられています。

もちろん、Starshipはまだ完成していません。

完全再使用、安定運用、軌道上燃料補給、月面着陸、火星輸送。

ここまで考えると、まだ多くの技術的な壁があります。

ただ、自分はStarshipについては、最終的にはかなりのところまで行くのではないかと思っています。

理由は、SpaceXの開発スタイルです。

SpaceXの開発サイクル

飛ばす → 失敗する → データを取る → 改良する → また飛ばす

このサイクルが非常に速い。

Falcon 9の再使用も、最初から成功していたわけではありません。

何度も失敗しながら、最終的には再使用ロケットを当たり前のように運用する会社になりました。

Starshipも同じ道を進んでいるように見えます。

もちろん、投資家としては楽観しすぎてはいけません。

Starshipの完全成功を株価がすでに織り込みすぎているなら危険です。

それでも、今までのロケット開発の達成経過を見ると、SpaceXならやってしまうのではないか。

そう思わせるだけの実績があります。

AIや宇宙データセンターまで視野に入る

さらにSpaceXは、AIや宇宙データセンター構想にもつながっていく可能性があります。

ここは、正直かなりぶっ飛んでいます。

ロケットを飛ばすだけでも普通ではありません。

そのロケットでStarlinkという衛星通信網を作り、さらにAIインフラや宇宙空間でのデータセンター構想まで見ている。

普通の企業分析では、なかなか扱いにくい領域です。

AI事業は、現時点では大きなリスクでもあります。

巨大な設備投資が必要で、競争相手も世界最強クラスの企業ばかりです。

報道では、SpaceXのAI部門は売上を上げている一方で、巨額の赤字や設備投資負担も抱えているとされています。特にAI部門の赤字や資本支出の大きさは、SpaceX全体の収益性を見るうえで無視できない要素です。

ただ、SpaceXが考えている未来は、単なるAIチャットボットではありません。

宇宙インフラとAIインフラを結びつけようとしている。

この発想自体が、普通の会社とは違います。

成功するかどうかは分かりません。

むしろ、かなり難しいと思います。

それでも、ここまで大きな構想を本気で進めようとする会社は、ほとんどありません。

株価はおそらく説明できない水準になる

投資対象として考えた場合、最大の問題は株価です。

SpaceXは上場すれば、かなりの人気を集める可能性が高いと思います。

報道では、SpaceXのIPOが史上最大級になる可能性や、1兆ドルを大きく超える評価額が取り沙汰されています。

そうなると、普通のバリュエーションでは説明しにくい株価になるはずです。

  • 売上倍率で見ても高い
  • 利益で見ても高い
  • 将来性を織り込んでも、なお高い可能性がある

おそらく、どんな根拠を使っても「安い」とは言いにくい水準になると思います。

それでも人気化する可能性は高い。

なぜなら、SpaceXは単なる企業ではなく、物語そのものが強すぎるからです。

ロケット。Starlink。Starship。AI。火星。

これだけのテーマを一つの会社が持っている。

しかも、それを夢物語だけで終わらせず、実際に一部を現実にしてきた。

株価が高くなるのは、ある意味で当然かもしれません。

ただし、普通の投資判断で考えれば、上場直後に飛びつくのは危ないです。

初値があまりに高ければ、高値掴みになる可能性は十分あります。

ここは自分も冷静に見たいところです。

それでも投資したい理由

それでも、自分はSpaceXに投資したいと思っています。

理由は、短期で儲けたいからではありません。

むしろ、SpaceXについては、儲けられるかどうかを最優先には考えないと思います。

自分がSpaceXに惹かれるのは、この会社が過去に「無理そうなこと」を何度も現実にしてきたからです。

  • Falcon 9の再使用
  • Starlinkの実用化
  • Starshipの高速な開発

どれも、最初は無理に見えたはずです。

それでもSpaceXは、それを少しずつ形にしてきました。

だから、Starshipや火星開発も、完全な夢物語とは思えません。

もちろん失敗する可能性はあります。

予定通りに進まない可能性も高い。

開発費が膨らみ、株価が大きく下がることもあると思います。

それでも、この会社なら何かをやってしまうのではないか。

そう思わせるだけの実績があります。

イーロン・マスクの会社だから買いたい、という本音

そして、もう一つ本音を言えば、SpaceXに投資したい理由の中には、

「イーロン・マスクの会社だから」

という気持ちもあります。

これは、単に有名人だから買いたいという意味ではありません。

イーロン・マスク氏は、これまで何度も「そんなことは無理だ」と言われることを事業として進めてきました。

電気自動車を本格的な産業にしたTesla。
再使用ロケットを実用化したSpaceX。
衛星通信を現実のサービスにしたStarlink。

どれも、最初はかなり無謀に見えたはずです。

それでも、完全ではないにせよ、実際に形にしてきました。

もちろん、マスク氏にはリスクもあります。

発言や経営判断が極端に見えることもありますし、投資家としては振り回される場面も出てくると思います。

それでも、普通の経営者ではやらないようなことを、本気で実行してしまう人物でもあります。

SpaceXに投資するということは、事業内容に投資するだけではありません。

イーロン・マスクという異常な実行力に投資することでもあると思います。

自分としては、そこにも大きな魅力を感じています。

マスク氏の支配権も含めて乗る投資

SpaceXに投資するうえで、イーロン・マスク氏の存在は避けて通れません。

報道によると、SpaceXは上場後も、マスク氏が大きな議決権を握る構造になるとされています。

具体的には、一般投資家が取得するClass A株が1株1議決権である一方、Class B株には1株10議決権が付く二重株式構造になっており、マスク氏が上場後も大半の議決権を維持する見通しと報じられています。

普通の上場企業として見れば、一般株主の影響力が限られる点は注意が必要です。

ただ、自分にとっては、そこは大きなマイナスではありません。

SpaceXは、普通の会社ではありません。

ロケットを再使用し、Starlinkで衛星通信網を作り、Starshipで火星を目指す。

こうした構想は、通常の上場企業のように短期的な株主利益ばかりを気にしていては、なかなか進められないと思います。

むしろSpaceXの場合は、イーロン・マスク氏の強い意思決定があるからこそ、ここまで来られた面もあるはずです。

もちろん、これはリスクでもあります。

マスク氏の発言や経営判断によって、株価が大きく振れる場面はあると思います。

一般株主が経営に影響を与えにくい構造であることも、理解しておく必要があります。

それでも、自分はこの点については許容範囲内です。SpaceXに投資するなら、事業内容だけでなく、イーロン・マスク氏の強い支配力も含めて乗る投資になる。そう考えています。

自分にとってSpaceXは夢枠投資

自分にとってSpaceXは、儲けるための主力投資ではありません。

高配当株でもありません。

割安株でもありません。

安定した成熟企業でもありません。

むしろ、儲けられるかどうかを最優先に考えない投資になると思います。

言い方を変えれば、夢枠投資です。

未来への参加券。

この表現が一番しっくりきます。

SpaceXが作ろうとしている未来に、少しだけでも株主として乗ってみたい。

その気持ちの方が大きいです。

自分はこれまで、マイクロソフトなどの米国株で資産を増やしてきました。

その経験から、時代を変える企業に早い段階で乗ることの大きさも知っています。

もちろん、SpaceXが同じように報われるとは限りません。

上場時点で、すでに相当な期待が株価に織り込まれている可能性もあります。

それでも、後から振り返ったときに、

「あの会社に少しでも乗っていた」

と思えること自体に価値がある気がしています。

ただし、買い方は慎重にする

儲けを最優先にしないとはいえ、どんな価格でも買うという意味ではありません。

SpaceXは上場時からかなり人気化する可能性が高いです。

初値があまりにも高ければ、いったん見送る判断も必要だと思います。

買うとしても、主力ではなく少額。

一括ではなく、時間を分ける。

夢枠だからこそ、失敗しても生活や資産形成に影響しない範囲にする。

買う前に確認したいポイント

  • 公開価格
  • 初値
  • 時価総額
  • Starlinkの利益成長
  • Starshipの開発進捗
  • AI事業の赤字
  • ロックアップ解除後の需給

特に大事なのは、SpaceXの株価がどこまで未来を織り込んでいるかです。

Starlinkの成長だけで説明できる株価なのか。

Starshipの成功まで織り込んでいるのか。

火星や宇宙データセンターまで織り込んでいるのか。

ここを見誤ると、どれだけ良い会社でも投資としては苦しくなります。

だから、買うとしても慎重に。

でも、いつか少しだけでも持ちたい。

これくらいの距離感が、自分にはちょうどよいと思っています。

まとめ:儲けではなく、未来に乗る投資

SpaceXは、おそらく普通のバリュエーションでは説明できない会社になると思います。

上場時の株価も、かなり高くなる可能性が高い。

売上や利益だけを見れば、割高に見える可能性が高いと思います。

それでも、自分はこの会社に投資したい。

理由は、儲かるかどうかだけではありません。

Starlink、Starship、AI、火星開発。

普通なら夢物語で終わるようなことを、SpaceXは少しずつ現実にしてきました。

そして正直に言えば、イーロン・マスク氏の会社だから買いたい、という気持ちもあります。

普通なら無理に見えることを、実際に形にしてきた人物と会社。

そこに少しだけでも乗ってみたい。

また、マスク氏が大きな議決権を握ることも、自分にとっては許容範囲内です。

一般株主の影響力が小さいことは理解したうえで、それでもSpaceXという会社には、強い意思決定で大きな構想を進めてほしいと思っています。

自分にとってSpaceXは、主力投資ではありません。

儲けるためだけの投資でもありません。

あくまで夢枠投資。

未来への参加券。

上場したら、価格を見ながら慎重に考えます。

ただ、いつか少しだけでも、この会社の株主になってみたいと思っています。

ひとことまとめ

SpaceXは、割安だから買う銘柄ではない。けれど、未来を本気で動かそうとしている数少ない企業のひとつとして、少しだけでも参加してみたいと思わせる会社です。

2026年5月24日日曜日

【メガバンク決算を読む③】リーマン後の大増資が残したもの|EPS希薄化と、銀行株が戻りにくかった理由

第1部では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの2026年3月期決算を比較しました。

同じメガバンクといっても、利益構造には違いがあります。

三菱UFJは、国内銀行業務に加えて、Morgan Stanleyからの持分法利益が大きい。
三井住友FGは、収益性と効率性の高さが目立つ。
みずほFGは、かつての低収益イメージから脱却しつつあるものの、株価の戻り方にはまだ重さも感じる。

第2部では、三菱UFJとMorgan Stanleyの関係を整理しました。

2008年の金融危機の中で、三菱UFJはMorgan Stanleyに90億ドルを出資しました。
当時としては、日本企業とは思えないほど果断な決断でした。

そして、その出資は現在の三菱UFJの利益構造にもつながっています。

では、第3部では何を見るのか。

今回は、リーマンショック後に3メガバンクが行った大規模増資を整理します。

銀行にとっては、自己資本を厚くし、金融危機後の規制強化に備えるために必要な増資でした。
ただ、株主の立場から見ると、話は少し違います。

大量の新株発行は、既存株主にとって希薄化を意味します。
株数が増えれば、1株あたり利益、つまりEPSは薄まります。

利益が回復しても、EPSが簡単には戻らない。
EPSが戻らなければ、株価も過去の水準には戻りにくい。

自分はメガバンク株を保有しています。

しかも、付き合いは最近始まったものではありません。
リーマンショック前から保有していた銘柄もあり、金融危機後の下落や、その後の長い低迷も経験してきました。

当時は、銀行株に対してどこか安心感がありました。

日本を代表する大型株。
景気が回復すれば、いずれ株価も戻る。
配当もあるので、長く持っていれば報われる。

そんな感覚で保有していました。

しかし、現実は簡単ではありませんでした。

リーマンショック後、株価が大きく下がったあとに、メガバンク各社は大規模な増資を行いました。
銀行としては必要な対応だったと思います。

ただ、株主としては苦い経験でした。

株数が増えれば、1株あたり利益は薄まります。
その結果、業績が回復しても、株価はなかなか元の水準に戻らない。

当時の自分は、EPSや希薄化をそこまで深く理解していたわけではありません。

「なぜ、これだけ大きな銀行なのに株価が戻らないのか」
「なぜ、相場全体が戻っても銀行株は重いのか」

そう感じながら、長い間保有していた記憶があります。

今回の記事は、その苦い経験を、今になって改めて整理するための記録でもあります。

リーマン後、銀行はなぜ資本を必要としたのか

まず、なぜメガバンクは大規模な増資をしなければならなかったのか。

理由は大きく3つあります。

1つ目は、保有株式や海外金融機関への出資に関する評価損です。

リーマンショック後、世界の株式市場は大きく下落しました。
銀行は多くの政策保有株や金融関連資産を持っています。
株価が下がれば、それらの評価損が自己資本を削ります。

2つ目は、景気悪化による与信費用の増加です。

企業業績が悪化すれば、貸出先の信用リスクが高まります。
銀行は貸倒引当金を積み増す必要があり、不良債権処理費用も増えます。

3つ目は、国際的な自己資本規制の強化です。

金融危機後、銀行にはより厚く、より質の高い自己資本が求められるようになりました。
単に利益を出しているかどうかだけでなく、危機時に損失を吸収できる資本を持っているかが問われるようになったのです。

みずほFGの場合、2009年3月期の赤字修正では、与信関係費用が従来予想比で2300億円増え、5600億円となる見込みとされていました。
さらに株式関係損益も大きく悪化し、最終赤字は5800億円規模となりました。

銀行にとって、自己資本は信用そのものです。

自己資本が薄ければ、貸出余力も落ちます。
市場からの信用も落ちます。
最悪の場合、金融システム全体への不安にもつながります。

だからこそ、リーマン後のメガバンクにとって増資は避けにくい選択でした。

ただし、それは銀行側の理屈です。

株主から見ると、増資はかなり重い出来事でした。

三菱UFJの増資|Morgan Stanley出資の裏側で進んだ資本増強

まず、三菱UFJです。

三菱UFJは、2008年10月にMorgan Stanleyへの出資を実行しました。
これは第2部で整理した通り、現在の三菱UFJの利益構造につながる重要な投資です。

ただ、その一方で、三菱UFJ自身も資本増強を行っています。

三菱UFJの主な増資

  • 2008年12月:普通株式6億3480万株を発行
  • 発行価格:1株417円
  • 公募増資後の普通株式数:115億6847万9680株
  • 2009年12月:23億3700万株を発行
  • 発行価格:1株428円
  • 手取概算額の上限:約1兆260億円
  • 増資後の普通株式数:139億8541万4920株

調達資金の使途は、三菱東京UFJ銀行への出資に充当し、グループの財務基盤の安定化を図るというものでした。

三菱UFJについては、Morgan Stanleyへの出資だけを見ると「危機の中で攻めた銀行」という印象が強くなります。

ただ、その裏側では、自己資本を厚くするための大規模な普通株増資も行っていました。

つまり、三菱UFJはリーマン危機の中で、攻めと守りを同時に行っていたことになります。

Morgan Stanleyへの出資は、長い目で見れば大きな成果につながりました。
一方で、既存株主にとっては、増資による希薄化という負担もありました。

三井住友FGの増資|赤字転落と成長投資が重なった資本増強

次に、三井住友FGです。

三井住友FGは、2009年4月に2009年3月期の最終赤字見通しを発表しました。
連結純損益は3900億円の赤字見込み。
前回予想は1800億円の黒字だったため、かなり大きな下方修正でした。

同時に、最大8000億円の普通株増資方針も発表しています。

理由は、株安や不良債権処理による損失の拡大です。
公的資金に頼らず、財務健全化を優先するための増資でした。

三井住友FGの主な増資

  • 2009年6月:発行株数は最大2億3500万株
  • 発行価格:1株3928円
  • 増資額:最大9230億円規模
  • 希薄化:約30%
  • 2010年1月:募集株数3億4000万株
  • 発行価格:1株2804円
  • 発行価格の総額:9533億6000万円

調達資金は、全額を三井住友銀行の資本増強に充てるとされています。

三井住友FGの増資は、守りだけではありませんでした。

もちろん、金融危機後の自己資本強化という面はあります。
しかし同時に、海外ビジネスや投資銀行ビジネスの強化、証券業務の拡大といった成長戦略のための資本増強という色もありました。

ここは三菱UFJやみずほとは少し違うところです。

ただ、株主から見れば、やはり重い増資であることに変わりはありません。

2009年に約30%の希薄化。
さらに2010年にも大型増資。

銀行としては必要だったとしても、既存株主にとっては、1株あたり利益が薄まる大きな出来事でした。

みずほFGの増資|一番遅く、一番多く、そして赤字も一番大きかった

そして、みずほFGです。

今回調べていて、一番重く感じたのはみずほでした。

3メガバンクはいずれも、リーマン後に大規模な増資を行っています。
しかし、みずほは1回目も2回目も、3メガバンクの中で一番最後に増資をしています。

3メガバンクの増資タイミング

1回目の大型増資では、三菱UFJが2008年12月、三井住友FGが2009年6月、みずほFGが2009年7月。

2回目の大型増資では、三菱UFJが2009年12月、三井住友FGが2010年1月、みずほFGが2010年7月。

つまり、みずほは2回とも後追いで大規模増資を行った形です。

しかも、発行株数の規模が非常に大きい。

みずほFGの主な増資

  • 2009年7月:発行価格は1株184円
  • 調達額:差引手取概算で上限5264億円
  • 発行株数:公募で28億440万株
  • 追加売り出し分:上限1億9560万株
  • 2010年7月:発行価格は1株130円
  • 発行株数:56億900万株
  • 差引手取概算額:7480億円規模
  • 普通株式数:155億1581万4530株から211億2481万4530株へ増加

2010年の増資では、当初、最大60億株規模の公募増資が計画され、発行済株式総数は最大で約38%増えると報じられていました。

もちろん、株価水準が違うため、発行株数だけで三菱UFJや三井住友FGと単純比較するのは危険です。

しかし、普通株数の増加という意味では、みずほの増資は非常に重いものでした。

さらに、リーマンショック時のダメージも大きかった。

みずほFGは、2009年3月期に5800億円の最終赤字に転落する見通しを発表しました。
三井住友FGの赤字見通しは3900億円、三菱UFJの赤字見通しは2600億円でした。
この3社の中では、みずほの赤字幅が最も大きかったことになります。

みずほの場合、リーマン後の増資だけではありません。

2003年の不良債権処理時代に行った優先株の問題もありました。
その重さを引きずったまま、リーマン後にも再び大規模な普通株増資を行った。

ここが、みずほ株を見るうえで非常に重要だと思います。

EPSはなぜ戻りにくいのか

ここで、EPSについて整理します。

EPSは、1株あたり利益です。

EPS = 純利益 ÷ 発行済株式数

つまり、純利益が同じでも、株数が増えればEPSは下がります。

たとえば、発行済株式数が20%増えた場合、純利益が変わらなければEPSは約17%下がります。
30%増えれば、EPSは約23%下がります。
38%増えれば、EPSは約28%下がります。

銀行全体としては、増資によって自己資本が厚くなります。
経営の安全性は高まります。
金融危機後の規制にも対応しやすくなります。

しかし、既存株主から見ると、自分の持ち分が薄まります。

同じ利益を出しても、その利益を分け合う株数が増えている。
だから、1株あたりの取り分は減る。

これが、増資による希薄化です。

しかも、銀行は急成長企業ではありません。

メガバンクは、利益が一気に何倍にもなるようなビジネスではありません。
金利上昇や手数料収入の拡大で利益は伸びますが、基本的には巨大な成熟企業です。

そのため、一度大きく株数が増えると、EPSを元に戻すには長い時間がかかります。

利益を増やす。
自社株買いで株数を減らす。
配当を増やして株主還元を強める。

そうした取り組みを積み重ねて、ようやく1株あたりの価値が回復していきます。

保有株としてメガバンクを見る視点

今回、リーマン後の増資を改めて調べてみて、自分の過去の投資経験ともかなり重なりました。

自分はリーマンショック前からメガバンク株を保有していました。

当時は、銀行株に対して、どこか安心感を持っていました。
日本を代表する大手銀行であり、配当もある。
一時的に株価が下がっても、景気が戻ればいずれ回復するだろう。

そんな感覚で保有していました。

しかし、実際には長い低迷が続きました。

リーマンショックで株価が下がる。
その後、銀行は資本を厚くするために増資を行う。
増資によって株数が増える。
株数が増えれば、EPSは薄まる。
その結果、業績がある程度回復しても、株価はなかなか戻らない。

当時は、そこまで明確に理解できていたわけではありません。

ただ、株主としての感覚では、確かに重さを感じていました。

「なぜ、景気が戻っても銀行株はこんなに戻らないのか」
「なぜ、配当をもらっていても、株価の回復がこんなに鈍いのか」

今振り返ると、その理由の一つが、リーマン後の大規模増資だったのだと思います。

もちろん、銀行にとって増資は必要でした。
自己資本が足りなければ、金融機関としての信用を維持できません。
危機後の規制強化にも対応できません。

ただ、既存株主にとっては、やはり重い出来事でした。

株価が下がったあとに増資が行われる。
安い株価で大量の新株が発行される。
その分、1株あたり利益は薄まる。

これを経験すると、銀行株を見る目は変わります。

今のメガバンクは、以前とはかなり見え方が変わりました。

マイナス金利が解除され、金利上昇の恩恵が期待されています。
銀行の本業である利ざや改善にも追い風が吹いています。
増配や自社株買いもあり、株主還元の面でも魅力が増しています。

その意味では、いまのメガバンク株は、かなり面白い投資対象だと思っています。

ただし、単純に「利益が増えているから株価も上がる」とだけ考えるのは危険です。

見るべきは、純利益だけではありません。

EPSを見る必要があります。
発行済株式数を見る必要があります。
過去にどれだけ増資をしたのかを見る必要があります。

リーマンショック後の増資は、3メガバンクすべてに共通する出来事です。

三菱UFJも増資をしました。
三井住友FGも増資をしました。
みずほFGも増資をしました。

ただ、同じ増資でも、その後の見え方には違いがあります。

三菱UFJは、Morgan Stanleyへの出資が現在の利益構造につながっています。
三井住友FGは、収益性の高さや株主還元の強さが目立ちます。
みずほは、過去の増資による株数増加の影響が、株価やEPSを見るうえで比較的意識されやすい銘柄だと感じます。

みずほは、2020年に10株を1株にする株式併合を行っています。
このため、現在の株価だけを見ると、過去との比較が少し分かりにくくなっています。

ただ、株式併合は見た目の株価を変えるだけです。
企業価値そのものを増やすわけではありません。

だからこそ、みずほを見るときは、現在の株価だけでなく、過去にどれだけ株数が増えたのか、EPSがどこまで回復しているのかも意識しておきたいと思いました。

みずほ株を見るうえで残る論点

みずほについては、もう一つ意識しておきたい点があります。

それは、過去の株価水準との比較です。

みずほは2009年、2010年に大規模増資を行い、その後、2020年には10株を1株にする株式併合も行っています。

そのため、過去の高値と現在の株価を単純に見比べるだけでは、実態がつかみにくい部分があります。

重要なのは、株価の見た目ではなく、1株あたり利益がどこまで回復しているかです。

ここは、みずほ株を長期で見るうえで、今後も確認していきたいポイントです。

まとめ|銀行には必要だったが、株主には重かった

リーマンショック後の大増資は、銀行にとっては必要なものでした。

金融危機で自己資本が傷み、保有株の評価損や与信費用が膨らみ、さらに国際的な自己資本規制も強化される。
その中で、メガバンクが普通株増資によって資本を厚くしたのは、ある意味では当然の対応だったと思います。

資本が足りなければ、銀行はリスクを取れません。
貸出も伸ばせません。
市場からの信用も維持できません。

銀行として生き残るためには、増資は必要だった。

ただし、株主にとっては別です。

大量の新株発行は、既存株主の持ち分を薄めます。
株数が増えれば、EPSは下がります。
EPSが下がれば、利益が回復しても株価は簡単には戻りません。

今回整理した3メガバンクの特徴

三菱UFJは、Morgan Stanleyへの出資という攻めの決断を行う一方で、自身も大規模な資本増強を行っていました。

三井住友FGは、赤字転落に対応しながら、証券・海外・投資銀行ビジネスへの成長投資も意識した増資を行っていました。

みずほFGは、3メガバンクの中でリーマンショック時の赤字が最も大きく、2009年・2010年の増資も後追いで、発行株数の規模も大きいものでした。

自分自身、リーマン前からメガバンク株を保有し、その後の株価低迷を経験してきました。

当時は、なぜ銀行株がここまで戻りにくいのか、はっきりとは分かっていませんでした。

でも今になって振り返ると、大規模増資によるEPSの希薄化は、かなり大きな要因だったのだと思います。

今のメガバンクは、金利上昇、増配、自社株買いという追い風があります。
自分自身も保有株として期待しています。

ただ、過去の増資の傷跡を知ると、決算を見る目は少し変わります。

見るべきは純利益だけではない。
EPSを見る。
発行済株式数を見る。
自社株買いを見る。
配当余力を見る。

そして、過去の希薄化をどこまで取り戻しているのかを見る。

メガバンク株は、単純に高配当だから買う、金利上昇だから買う、というだけではなく、過去の資本政策まで含めて理解したほうがよい銘柄だと思います。

今回の記事は、自分が保有してきたメガバンク株を、もう一度きちんと理解するための整理でもありました。


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