※2026年9月27日時点。2026年度の数値は、実績と会社予想を区別して記載しています。
配当を目的にJTを買った翌年、減配されました。
私は2020年9月、約1,978円でJTを2,300株購入しています。当時の年間配当は154円でしたが、2021年には140円へ減額。それでも保有を続け、その後は配当の回復と増配を経験しました。
では、JTは何を原資に配当を増やしてきたのでしょうか。
その背景にあるのは、たばこ事業の収益力と、利益を株主へ厚く分配する方針です。今回はこの仕組みと、配当が続く前提を整理します。
1.高配当を支えるのは、稼ぐ力と株主還元方針
現在の株主還元方針では、配当性向75%を目安とし、±5%程度の範囲で判断するとしています。配当性向とは、利益のうち配当に回す割合です。
事業が生む利益に加え、この還元割合の高さが配当額を支えています。
ただし、配当性向の目安は、一定額の配当を保証するものではありません。利益が縮めば、同じ割合を配当に回しても金額は減ります。
また、配当額と配当利回りも別です。
年間配当が同じでも、株価が下がれば利回りは上がります。高い利回りには、割安さだけでなく、将来への不安が織り込まれている場合もあります。
2.喫煙者が減っても、利益が同じように減るとは限らない
国内のたばこ市場が縮小しているからといって、それだけでJT全体の利益が決まるわけではありません。
JTは海外にも事業を広げています。さらに、売上は販売数量だけでなく、販売価格や売れる商品の構成によって変わります。
実際、2026年上期のたばこ事業では、総販売数量は前年同期比1.0%増でした。一方、為替の影響を除いた自社たばこ製品売上収益は10.6%増。会社資料では、値上げや商品構成の変化による押し上げが大きく寄与しています。
数量の伸びが小さくても、単価や商品構成の改善で収益を伸ばせる。この点が、JTの稼ぐ力を理解する手がかりになります。
JTは、従来のたばこ事業で生む現金を、加熱式たばこなどへの投資にも振り向けています。既存事業の収益を受け取りながら、次の事業基盤を育てる構造です。
海外事業の円換算額は、為替でも変わります。ただ、2026年上期は為替の影響を除いた全社調整後営業利益も前年同期比19.4%増でした。
今回の増益は、為替の追い風だけではなく、事業自体の改善を伴っています。
3.年間272円の配当を支える余力はあるか
JTの年間配当は、次のように推移しています。
| 年度 | 1株当たり年間配当 |
|---|---|
| 2020年 | 154円 |
| 2021年 | 140円 |
| 2022年 | 188円 |
| 2023年 | 194円 |
| 2024年 | 194円 |
| 2025年 | 234円 |
| 2026年 | 272円(会社予想) |
2021年に減配した後、2022年には減配前を上回りました。その後も毎年必ず増えているわけではなく、据え置きの年を挟んでいます。
2026年7月の上期決算では、年間配当予想を242円から272円へ引き上げました。中間配当は136円、期末は136円の予想です。
会社予想が実現する前提なら、年間272円の配当を支える余力はあると見ています。
2026年度の予想配当性向は75.2%。カナダの訴訟和解に伴う支払いなどを反映した利益を基準としており、還元方針の目安に沿った水準です。
現金収支も確認すると、フリー・キャッシュ・フロー予想は6,510億円。これに対し、当年度の配当総額は約4,800億円と概算できます。後者は、配当算定用の利益予想と配当性向から計算したものです。
年間の現金収支予想が配当相当額を上回る点も、増配を支える材料です。ただし、配当の支払い時期にはずれがあるため、この差額がそのまま手元に残るわけではありません。
ただし、利益の約4分の3を配当に回す以上、減益時の余裕が大きいわけではありません。
例えば、配当算定の基準となる利益が予想より20%減り、配当総額は変えないと仮定すると、配当性向は75.2%から約94%へ上がります。これは業績予想ではなく、減益への耐性を見るための単純計算です。
配当額が変わらなくても、その負担は重くなる。
足元の増配には裏付けがありますが、減益が続けば同じ配当を維持しにくくなることも、この数字から分かります。
4.高配当を長く受け取るために、見落としたくないリスク
私が配当の持続性を見るうえで、特に重要だと考えるのは次の3点です。
一つ目は、値上げで販売数量の減少を補えなくなることです。
JT自身も、従来型たばこの需要減少や、安い商品へ移る動きを事業環境の課題として挙げています。販売数量の減少が値上げ効果を上回れば、配当の原資となる利益も圧迫されます。
二つ目は、訴訟や規制による負担です。
カナダの訴訟和解は、実際の支払いを配当算定にも織り込む必要が生じた事例です。「一時的な損失」と説明されていても、その後の資金流出まで消えるわけではありません。
三つ目は、加熱式たばこの競争と投資負担です。
将来の成長につながる投資は必要ですが、その成果が出るまでには費用が先行します。JTもこの分野での競争激化を想定しています。
販売が伸びても費用がそれ以上に増えれば、株主還元の余力を削る可能性があります。
5.私が1,978円で買ったときに考えていたこと
2020年に購入した2,300株の取得額は約455万円。当時の年間配当154円を基準にすると、取得価格に対する利回りは約7.8%でした。
米国株を保有していた頃には、アルトリアなどのたばこ株にも投資していました。その経験から、JTも配当を受け取りながら長く持つ銘柄として見ていました。
翌年に140円へ減配されても、すぐに売ろうとは考えませんでした。当時は、コロナの影響が落ち着いて業績が回復すれば、配当も戻っていくだろうと考えていたからです。
ただ、これは当時の私の見通しです。減配の理由をコロナだけで説明できるわけではありませんし、回復時期まで読めていたわけでもありません。
結果として配当は増えましたが、「減配しても持ち続ければ報われる」という一般的なルールにはできないと思います。
2026年度の年間配当予想272円を、購入した2,300株に当てはめると、税引前で62万5,600円になります。取得額に対しては約13.7%です。
ただし、約13.7%は過去の購入価格に対する利回りであり、今から買う人の利回りではありません。
例えば、年間配当予想272円に対し、株価を仮に6,000円とすれば予想利回りは約4.5%、8,000円なら3.4%です。どちらも現在株価を示したものではありません。
同じJT株でも、支払う価格によって配当から得られる利回りは変わります。
購入時の詳しい経緯は、JTを1,978円で2,300株購入した実録①にまとめています。
6.まとめ|配当を支える力が続いているかを見る
高配当株を持っていると、つい受け取る金額に目が向きます。私自身、増配はうれしいですが、以前安く買えたことを理由に、今の業績評価まで甘くしたくはありません。
配当が増えたという結果と、それを支える事業の変化を、これからも分けて見ていきたいと思います。
最新決算と保有株への影響は、JTが配当予想を272円へ増額した実録②でも紹介しています。
参考資料
投資に関するご注意
本記事は、筆者自身の投資経験や売買記録をもとにした個人的な振り返りであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 株式投資には元本割れのリスクがあり、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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